あれはまだ 俺が小学校に上がる前か そのぐらいだったと思う
家族で 回転寿司屋に食べにいったとですわ
店はわりにがらがらで
俺らはカウンターに座り
とにかく
サラダ巻きを食いまくってたとです
当時の俺は
かによりカニカマのほうがはるかにうまいという真理に目覚めたばかりで
大人たちは 高いもんがいいもん の理論に目をつぶされて
見えていないんだ
王様が 裸だってことをと思っていたとかいないとか
とにかくサラダ巻きを食いまくってて
うちの弟もサラダ巻きを負けじと食いまくって
うちの親が
「そんなサラダ巻きばっかり食べんで
なんでも好きなもんとりないよ」
というと
「いやいや、これが一番安いし うまいし これがいい」
と二人していっていた
サラダ巻きが一番安いのに 一番うまい!
そんな得した気分満点で 帰ろうとしたそのとき
お会計へと向かう母に
板前さんが
「・・・お客さん
お代はいいんで
なんでも 好きなネタ 一つ
食べてってください」と。
板前さんの目にうつった俺たちは
子供二人が けなげに親の財政状況を気にして
食べたいネタも食べないこんな世の中じゃ・・・ぽいずんということだったのだろう
「おっかぁ、オラたち
サラダ巻きが大好きだ!
パンの耳も大好きだし
おっかぁが作ってくれるたんぽぽの炒め物も
とってもはらが膨れるだ!!
ティッシュを水で戻して食う料理も もちろん大好きだでー」という家族が
無理に無理を重ねて
こんなところへやってきたんだろう・・
たとえ回転寿司でもいい
あのこたちに 最高の ホンモノの寿司をにぎってやろう
それが 俺が料理人として
今 すべきことなんじゃないだろうか
彼の美しい決意が 見えるようないい話ですが
うちの親は 恥ずかしくて死にそうだったらしいです