「三十代の肌にしてほしい、だって?」
「ハイ、もうシャワーの水をはじきたくないんです
先生のお力で、どうか、どうか
私を三十代にしてくれませんか?」
「いや、もちろん私の力をもってすれば
皮膚を老化させることくらいたやすいことだが
しかし、どうしてまた老化させたいなどと
時代の流れに逆行するようなことをのぞむのです?
世界中がアンチエイジングにやっきになっているこの時代に
あなたはそんなに美しい肌を持っているというのに・・・」
「好きな人がいるんです
その人は三十代の肌の触り心地が最高だって・・
シャワーの水をはじかなくなったらまた来いって・・
あれから、寂しさを埋めようと思って
いろんな人に抱かれてみたけど・・・
でも、むしろ寂しさは増していくばかりで・・
先生、私にはやっぱりあの人しかいないんです!
私はあの人に好かれるために三十代に
いや、むしろ団地妻になりたいんです!」
「ほう、団地妻と言ったな・・
団地妻になるということがどういうことなのか
きさまにはわかっているのか?」
「だから、マイケルジャクソンのように
三十代の肌を移植して
適当に誰かと結婚すれば」
「それで団地妻がハイ一丁あがり♪だと?
きさまには団地妻のなにもわかってはいない
確かにそれで外見的には団地妻になれるかもしれない
しかし、そんな付け焼き刃
団地妻マニアの前にでれば
一瞬で見抜かれてしまうだろう
実際、実になげかわしいことではあるが
今ゲンザイ、団地妻を名乗っている女達のなかで
真に団地妻と呼べるのは
1%にも満たない
あとはすべて「団地妻もどき」なのだよ
擬態だ
きびしい自然界で生き抜くために
蝶が枯れ葉に化けるみたいなものだ
きさまも、そんなものになりたいのか?」
「団地妻って・・じゃあ真の団地妻って
いったいなんなんですか
教えてください、先生っ!
私、団地妻になりたいんです!
そのためだったらなんでもします!
先生、私を一人前の団地妻にしてくれませんか、お願いしますっ!」
「うむ、まず真の団地妻とはなにか
ということから話をしよう
ここに一人のパチスロ野郎がいる
彼に「ナカス」という言葉をきかせたところ
その言葉だけで口からヨダレがたれてきたそうだ
つまり、彼にとってナカスとは
それくらいすばらしい場所だということだ(ナカス:福岡の風俗地帯。還暦をむかえるじいさんがバイアグラを飲み、走ってナカスの風俗店にやってきて腹上死したことで有名。そのときにじいさんがつぶやいた「早く行かないと・・・早くイかないと・・・早く逝かないと」はその年の流行語大賞にノミネートされた)
団地妻という言葉もまた
多くの男にとって
ナカスと同じくらい魅力あふれる言葉なのだ
だからこそ、団地妻だときいて行ってみたら
なんちゃって団地妻だったときのがっかり感には
相当なものがある
真の団地妻とは
ジョブチェンジしさえすればなれるといったようなものでは
断じてないっ!
例えば、私は外見的には全く団地妻ではないが
心のなかは
誰よりも団地妻であるっ!!」
このあと、女が「団地妻になれる壺」を買うまでに
一時間かからなかった
壺を買った女に、男は言った
「もしかしたら、あなたが団地妻になれないのは
先祖が水子の供養をおろそかにしてたせいかもしれませんね
もしそうだとしたら
壺だけでは足りないかもな」
と
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genre : 日記